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部下とのコミュニケーションの取り方

 コミュニケーションとは「思想・情報などの伝達」という意味(狭義)ですが、では一体何を伝えて、どうなろうとしているのか。辞書でcommunicateを調べると、情報伝達のほかに、「感情を伝える、意見を交換する、理解し合う、意思疎通により親密な関係を築く」という意味(広義)があります。人は広義のコミュニケーションを求めているのに、ビジネスの現場ではそれがなかなか実践できていないのが現実ではないでしょうか。
 アメーバ経営コンサルティングでは、導入企業様に対して、コンサルティング開始時にアンケートを取ります。これは、主に係長クラス以上の役職者を対象に会社の仕組みに対する認識や自身の意識について質問するものですが、この中でもコミュニケーションに関する質問項目は回答ポイントが低いものの1つです。朝礼・会議・指示・報告など、上司と部下が接する機会は多くあるのに、意思疎通が不十分と感じる人が多いのはなぜでしょうか。
 上司と部下が互いに“理解し合い”、“親密な関係を築く”ためにどのような取り組みが必要なのか。私のこれまでのコンサルティング経験の中で、特に感じている3点についてご紹介します。

 1.考え方を伝える努力をする
 企業が永続・発展し続けていくためには、その会社の経営理念・哲学が一人ひとりの社員に浸透していることが重要です。企業経営においては、社長から一般の社員まで大小さまざまの判断を下さねばならない場面が毎日続きます。経営理念・哲学が全員に浸透していれば、社員の誰もがその会社にとっての「正しい判断」を行うことができます。このような状態を実現するためには、社員に対する継続的な理念教育が重要になりますが、それにも増して、日常的な上司と部下のコミュニケーションが非常に大切です。
 例えば、部下に指示を出す時、報告や相談を受ける時には、リーダーは自分が理解している自社の経営理念・哲学をベースとして、自分の言葉で話をしなければなりません。そのためには、リーダーは普段からこの会社(部門)はどんな考え方で事業に取り組むのか、どの方向に進もうとしているのか、顧客第一とは誰にどんな満足を感じて欲しいと願っているのか、それを実現する具体策は何かといった点を深く考えている必要があります。また、こうした考えについて、部下と意見を交わすうちにリーダー自身の経営理念・哲学に対する理解が一層深まることもよくあります。このように、経営理念・哲学をベースとして部下と対話することは意識しなければできないことで、地道な取り組みが求められますが、部門内のベクトルが揃うという形で実を結ぶものと思います。

 2.「なぜ、どうなる」を説明する
 部下に指示を出したり、仕事を任せる時、なぜその仕事を行う必要があるのか、なぜその仕事を任せるのか、その仕事が成就したらどうなるのかといった点をよく説明することが大切です。例えば、営業部門の上司が「今日中にこの資料に基づいて、見積書をつくって欲しい」と頼めば、部下は見積書をつくるでしょう。しかし、これは単なる作業に過ぎません。ここで上司は「なぜ、どうなる」を説明すべきです。その商談は全体の中でどの段階まで進んでいるのか。なぜ、その見積書が明日必要なのか。なぜ、その部下に作成を頼むのか。そして、受注が獲得できれば、自部門や会社にとってどれだけプラスとなるのか。こうした説明をして仕事を依頼すれば、部下は仕事の内容を充分理解して見積書を作成し、受注獲得の折りには、上司と達成感を共有することができるでしょう。簡単なようですが、意外とできていないのが現実です。コミュニケーションが活発な状態とは、このような小さな配慮の積み重ねによってつくり出されます。

 3.部下の成長を願うこと
 部下に仕事を任せる時に、上司はどのような「思い」を持って対応すべきでしょうか。面倒だから部下にやらせるとか、自分にトラブルが降りかかるのを警戒して事前に状況確認させるという発想では、前向きなコミュニケーションはできません。部下に仕事を任せる時は、上司はその部下の成長段階や成長目標を考え、次の段階にステップアップするために、この仕事に挑戦してもらおうという積極的な姿勢で臨むことが大切です。また、それだけでなく、上司が部下に対して期待している能力レベルをきちんと話しておくことも、部下の成長や意識付けに非常に有効です。
 もう一つ大切なことは、部下には自分よりも優秀になって欲しいと願うことです。よく、自分の経験や手法を部下にも強いる人を見かけます。しかし、50代の上司と同じ経験を20代の部下は体験することはできません。上司は、自分の経験の中で得た「仕事にかける思い」を言葉で部下に伝えて欲しいと思います。また、後輩となる部下は先輩の築いた実績やノウハウを発展させて、さらに高いレベルの仕事にチャレンジすべきです。そして上司は、部下が優れた仕事をできる環境をつくり出さなければなりません。部下が自分を追い越すほどの力を発揮できなければ、それは上司として努力不足だと自覚して欲しいのです。職場には、優れた知識・技能やさまざまな経験を持つ部下が多くいるはずです。彼らの知識や経験を活かし、ベクトルを合わせて組織の力とし、事業を伸ばすことがリーダーの役目です。部下が成長し、将来の会社を支えるリーダーとなって欲しい。そう考えて部下に接することが、部下とのコミュニケーションを実りあるものにするのです。

 以上、「部下とのコミュニケーションの取り方」について、これまでのコンサルティング経験から感じていることをまとめました。皆さんの職場において、豊かなコミュニケーションづくりの参考としていただければ幸いです。


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筆者プロフィール

【画像】松井 達郎

エグゼクティブコンサルタント
松井 達朗 (Tatsurou Matsui)
1985年京セラ入社。1993年にコンサルティング部門に異動。製造業をはじめ多くの業界に対して豊富なコンサルティング経験を持ち、2011年よりJALグループへの部門別採算制度導入プロジェクト総括責任者としてプロジェクトを率いる。現在ではアメーバ経営コンサルタントの育成にも力を入れている。


※出典:アメーバ経営倶楽部会員情報誌「アメーバ経営倶楽部」<合本>Vol.1-8
※記載情報は発行当時のものです。ご了承ください。