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コラム-アメーバ経営-

管理部門の課題解決のヒントを掴む
①管理会計と財務会計を連動させるには

 アメーバ経営を導入された企業様から、アメーバ経営と財務会計との連動をどうすればよいかというお悩みや、また、マスタープラン(年度計画)をどのように立案すればよいのかというお悩みをよくお聞きします。
 アメーバ経営を全社的なマネジメントシステムとして確立していこうとする時には、やはり財務会計との連動、年度計画の立案、そして幹部会の内容や会議資料を工夫していく必要があると考えます。そのポイントを管理部門の果たすべき役割と関連させてご説明いたします。

1.アメーバ経営と財務会計の連動
①管理会計と財務会計の連動の必要性
 まず、アメーバ経営と財務会計を連動させることの必要性をご説明します。
京セラ創業者の稲盛名誉会長は、管理会計と財務会計について次のように述べています。

 「一般的には採算の向上というものは経営を管理するための管理会計の役割であり、企業の業績と財務状況を外部に正しく報告するための財務会計とは性格を異にしている。」

 ここでいう採算を向上させていくための管理会計とはアメーバ経営のことを指します。「売上最大、経費最小」という原則のもと全員参加経営を実現し、業績向上につなげようとするアメーバ経営と、対外的に財務状況を正しく報告するための財務会計とは性格を異にしているということです。しかし同時に、

 「どちらも経営の実態を表すものとして両者の間に整合性がなければならない。」

 とも述べています。
 管理会計が財務会計と連動していれば、経営者や幹部の方々もアメーバ経営を用いて従業員と共に経営ができ、よい結果が出れば共に喜ぶことができます。つまり、時間当りが上がれば財務会計上の業績も上がるということが大事です。そうではなく、管理会計と財務会計がダブルスタンダードで存在して経営者が財務会計に重きを置くと、従業員の皆様もアメーバの数字への意識が薄れがちになり、現場主体の経営、全員参加の経営が崩れてしまいかねません。
 また、アメーバ経営と財務会計の整合性が明確であれば、従業員の皆様も自部門の実績が会社全体の業績に直接結び付いているという認識を持つことができます。そうなれば経営者と同じ視点で会社業績を捉え、会社の方針や状況をより共有化しやすくなると言えます。 実は京セラも最初はアメーバ経営と財務会計は連動していませんでした。アメーバ経営にはアメーバ経営の運用ルールがあります。タイムリーに成果を出すという観点に立ってさまざまなルールを構築していますので、財務会計とは一致しない点があったのですが、それではアメーバ経営で経営ができないという稲盛名誉会長の思いを受け、経営管理部門が経理部門と調整をして連動させていったのです。

②アメーバ経営と財務会計を連動させるステップ
 アメーバ経営では当月の実績を末で締めて翌月の1日には実績をタイムリーに出そうとしますから、経費を若干早めに締めたり、月末までに処理したもののみを該当月の経費として計上します。一方、経理では処理が翌月になっても前月で発生したものであれば組み入れていこうとしますので、その点が一致しないことになります。
 また、減価償却も管理会計上は法定償却期間よりも早く償却をして経費計上することがあり、その場合は財務の数値とは異なってきます。
 間接部門の経費の配賦についてもアメーバ経営と財務会計でルールが異なれば、これも一致しないということになります。
 こうしたルールや実績計上基準の相違点を、アメーバ経営に合わせるように財務会計側の処理を変えていくことです。その上で採算表をベースにした月次のP/Lをつくることがポイントです。つまり、
 ⅰ.締めや処理方法・計上基準についてアメーバ経営運用ルールと経理処理ルールを基本的に統一する
 ⅱ.採算表に基づく月次決算資料(P/L)を作成する
 という流れとなります。
 まず、採算表から、採算表に基づく月次決算資料(P/L)をまとめる際には、営業・製造部門を持つ事業部門の場合は売上をベースにしていきます。アメーバ経営では製造部門が売上計上の有無に関係なく、モノをつくった段階で生産(稼ぎ)を計上するルールを採用することがありますので、そうした点をまずは売上ベースに置き換えるのです。 社内取引、特に営業・製造の社内取引を調整するということで、生産計上をいったん取り消して在庫として処理するなどの調整が必要になります。
 また、生産金額の中には内部利益も含まれますので、これも除去する処理が必要となります。そうしたものを事業部内の調整としていきます。このほか、全社の調整として社内金利の処理も必要になります。
 さらに、アメーバ経営では人件費を経費に含めませんので、人件費を算出して計上します。賃率を用いて時間を人件費に置き換えて計算しており、時間移動を行った場合は移動された時間分が移動先部門の人件費としても計上されることとなります。
 このような形で月次の採算表に基づくP/Lを作成しており、京セラではこれが月次の決算資料となって、決算期には損益計算書と最終の調整を行っています。
 採算表に基づく月次決算資料と財務の損益計算書の連動のためには、決算調整の処理として原価計算に基づく在庫評価や評価額の洗い替えや社内締め日との差の調整などを行います。決算差額、調整をきちんとすると同時に、どこで差が生じているのかを明確にして経営トップに説明する流れとなっています。
 こうしたアメーバ経営と財務会計の連動に向けた一連の取り組みは、3つのステップに分けて進められるとよいと思います。
 第1ステップでは、まず採算表に基づく月次P/Lを作成することです。そして現状のP/Lとの整合表をしっかりまとめ、どこにどれだけの差があるかを明確にすることが必要です。まずは課題を明確にするということです。
 第2ステップではアメーバ経営と財務会計の統合に向けた課題事項への具体的な取り組みとして、差をどう埋めていくのか、どういった処理をするのかをまとめます。これは経理、管理部門の方が中心となって進める段階です。
 最後に第3ステップでは経理データと採算表データの一元化です。京セラではワンデータで財務と採算表が作成できるようになっていますが、それには経理のオペレーションや経理システムを見直す必要があります。


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筆者プロフィール

【画像】堀 直樹

シニアコンサルタント
堀 直樹 (Naoki Hori)
1985年京セラ入社、1993年にコンサルティング部門に異動。社外へのアメーバ経営コンサルティング事業に従事し、コンサルタントとして、多数の企業のアメーバ経営導入に携わる。これまでに約50社の企業へアメーバ経営の導入コンサルティングを行う。2002年神戸大学MBA取得。
アメーバ経営学術研究会の事務局として、アメーバ経営の学術的な見地からの研究に携わる。現在は、コンサルティング新サービスの開発、コンサルタント育成支援などアメーバ経営の啓蒙活動に携わっている。


※出典:アメーバ経営倶楽部会員情報誌「アメーバ経営倶楽部」<合本>Vol.23-28
※記載情報は発行当時のものです。ご了承ください。